高齢者で慢性便秘に悩む方は、数多くいらっしゃいますが、その中でも特に多い便秘の種類が、弛緩(しかん)性便秘と直腸性便秘です。
これは、人間の身体が加齢により身体全体の筋力が低下することが原因です。
80歳代の方と30歳代の頃の筋力を比較した場合で、80歳代の方は30歳代の頃からの筋力が約30~40%低下するとも言われます。
それに関連して、大腸が排便をさせる蠕動(ぜんどう)運動の力が弱まることになります。
高齢者の筋力低下と弛緩性便秘について
まず、弛緩性便秘の原因は、寝たきりや運動不足で大腸の動きが低下することにあります。
大腸には、内輪筋と外縦筋という2層の筋肉が周囲を覆って、この筋肉が大腸内に入った食べ物を運んだり、撹拌させる役割を持っていますが、加齢とともにこれらの筋力は低下してきます。
そして、運動不足になると身体の動きに合わせて腸に与えられる、健康的な刺激が減ることも、便秘の一因となっています。
また、高齢者の方の場合、多くの方が何らかの疾患を抱えており、なかには、何種類もの薬剤を服用されている方もいるのですが、使用される内服薬の中には、オピオイドや抗精神病薬などの大腸の蠕動運動を抑制する薬も多数あります。
そのため、薬の影響によって便秘が生じていることも考えられるのです。
さらに、弛緩性便秘の原因としても、腹筋の低下が挙げられます。
加齢によって腹筋自体が衰えてしまい、排便のための十分な腹圧をかけることができず、便を排泄することができない場合があります。
筋力の低下で表れる弛緩性便秘の解消法としては、適度な運動を心がけることが大切です。
ウォーキングの用に急いで歩くのでなく、自宅周辺など無理せずにゆっくり散歩するだけでも、運動をしないことよりも充分に効果的です。
また、毎日の食事の中では、繊維質の多い食品などバランス良く摂ることや、大腸内の便が水分不足で硬くならないように、こまめに水分を摂ることも必要です。
便秘解消や予防に重要な水分摂取┃便秘解消の即効性や予防を助ける食べ物
内服されていて心当たりの方は、一度かかりつけ医に相談されることをお勧めします。
排便を我慢しがちな高齢者の直腸性便秘について
次に、直腸性便秘も高齢者に多い便秘の1つです。
この便秘は、必要以上に排便を我慢したり、市販の下剤を乱用することによって起こります。
本来、便は大腸を通過して直腸まで到達すると、大脳から出された指令の便意を感じることで、排便になるのですが便が直腸まで到達しているにも関わらず、便意を感じないことが特徴です。
この場合、便秘だからといくら市販の下剤を服用してみても、便秘が解消されない場合が多く、市販の下剤が便秘解消を即効にさせるのは、配合されている成分が大腸に刺激を与えることでの効果なので、逆に、高齢者の場合は身体に負担をかけてしまうこともあります。
そのような理由から、高齢者に多いこれらの便秘原因を見分けるのは、なかなか難しいことで、一度、慢性的な状態になると解消されるのに時間がかかってしまいます。
また、便秘原因が特定できない状態が続くと、便秘が原因で発症する大腸がんなど内臓に関する病気のリスクも高くなってしまいます。
高齢者の便秘解消や予防などの対策
そのため、高齢者に関わらず身体に負担をかけることなく、便秘解消や予防に効果的な方法は、栄養バランスの良い食事、適度な運動と水分摂取、そして腸内環境を整える働きをする善玉菌を増やすことです。
特に、腸内の善玉菌に関しては、加齢により腸内からどんどん減ってしまうので、根本部分から腸内環境を整えるためにも意識して摂取されるようにしてください。
また、日常生活でこのように便秘解消のため様々なことを実践しても改善が見られない場合は、かかりつけ医を受診して、便秘の種類に応じた対処をしていくことが大切です。
しかし、可能な限り高齢者の便秘解消には、おなかの負担になるような下剤などを使用されず、年齢と共に減少している腸内の善玉菌を自然な形で増やす方法が1番良いと思われます。
ほかにも、オリゴ糖食品、国産の便秘解消サプリメントや便秘解消のお茶なら、負担をかけずに高齢者の方の便秘解消に利用できるので、一度、これらの製品を試してみるのも方法の1つです。